映画館の舞台裏で映写機の音を収録
録りにくい音を、あえて生で録る。それが音録りを始めてから重視してきたことです。今回ご紹介するのは、映写機の音の収録風景です。
ドラマなどで、回想シーンや大昔のシーンなどには映写機のカタカタという音がマッチします。素材として揃えたいとは思っていた音ですが、そもそもデジタル化が進む現代ではアナログの映写機を置いてある映画館がほとんど存在しません。今回の収録は、まずそんな希少な場所を探し出し、収録許可を得ることから始まりましたが、ある映画館で収録許可をいただくことができました。映画館自体を貸し切っての収録です。そこにある映画用の35mmフィルム映写機は、メンテナンスされていて今でも動いているとのことでした。
映画館に到着すると、技師の誘導の元、関係者以外はまず入ることができない試写室に入りました。部屋の中は狭く、入るとすぐ目の前に35mmフィルム映写機がありました。映写機はメンテナンスされているだけあり、綺麗な状態を保っていました。このようなアナログ映写機はメンテナンスできる技師がどんどん減っています。この映画館には16mmフィルムの映写機もあるのですが、今では使えなくなっています。
収録にあたっては、技師に無音音声フィルムを回していただくことになりました。このフィルムは黒い部分がない完全に透明なもので、映写機の動作テスト用です。私の合図で技師の方にスイッチを入れていただくと、いよいよ映写機が動き始めました。
- 映写機の音
- サイトで公開しているバージョン
しかし、実際に聞いてみると自分が思っていたのとイメージが違う音でした。録る位置が問題なのではと考え、映写機の後ろに回ったり、少し離れてみたり、色々な方向から何度も収録を行いました。しかし、残念ながら完全に納得いく音にはなりませんでした。その間、技師の方に何度も操作をお願いすることになりました。
- 別角度から録った音1
- 悪い角度
- 別角度から録った音2
- 角度をいろいろ変えて試行錯誤
もっと古い機種でないと、趣のある音は出ないのかもしれません。しかし、「映写機の生音」のフリー素材はネット上にほぼないはずなので、今回録った音でひとまず公開させていただくことにしました。
今回の収録は、クオリティという点において目的を完全には果たせませんでしたが、技師の方が非常に協力的だったことがありがたかった部分です。
お金を払って、効果音の収録を誰かに手伝っていただくことはこれまでもありました。こうした効果音というニッチなジャンルの録音協力依頼は対応がぞんざいであることも多く、予約しても忘れられていたケースもあるため、今回は協力的な方だったことがとてもありがたく感じました。
効果音の収録は、収録先の方からすれば滑稽に見えるためか、理解が得られず大変な部分もあります。しかし、個人事業主として取り組んでいる以上、簡単には諦めません。質の良い効果音をフリー公開することによるメリットは計り知れないものがあり、それは私にとっても皆様にとっても同じです。
当サイトでは1つの音であってもこれだけ手間をかけています。サイト上に一見無造作に配置されているようにも見える効果音にも、実は私の思い入れやこだわりががあります。これからも、よりこだわった音作りを目指していきます。